ある専門店が25年秋冬向けにスウェットパンツを企画した。ウエストはゴム仕様で裾を絞らないワイドストレート。トラウザー感覚で着られるデザインだ。トレンドのシルエットではあるが、似たような商品はすでにたくさん市場に出ている。
特に今春は「ユニクロ:シー」の「スウェットワイドパンツ」が、税込み3990円の価格で大ヒットした。手頃にトレンドのデザインが買える大手SPA(製造小売業)とどう差別化するのか。
失礼を承知で質問すると、企画したバイヤーも「価格と品質のバランスでは大手に勝てない」。だから自店の顧客に多い40代以上の男性がスウェットパンツに求める要素をデザインや仕様に落とし込んだと教えてくれた。
編み地は冬まで着ることを前提に綿・ポリエステルではなく、表地を綿、裏毛はウールにした。股上も大人客に抵抗感のない深さに調整した。携帯電話や財布を頻繁に出し入れするサイドポケットは手を入れやすい角度に付けた。
価格はおそらく1万円を超えるが、その店は単価の高い服が主力で、EC全盛の今も実店舗の接客販売にこだわる。「店頭で丁寧にデザインや価格の理由を伝えれば、顧客は納得してウチの商品を選んでくれる」。万人向けの究極の普段着が市場で圧倒的シェアを占めても、特定の誰かを思って作る服のニーズはなくならない。